レコードプレーヤーは家電ではありません。楽器です。

家で生楽器によるライブミュージックを楽しむ贅沢。

かつて1960 年代から1970 年代に掛けて日本においてもハイファイオーディオブームなるムーブメントがありました。

 

当時は「ステレオ」という言葉が多く使われ、大手電気メーカーまでもが参入するなどして、まさに三種の神器(TV、冷蔵庫、洗濯機)の次はステレオ装置と呼ばれる程、音楽を家で楽しむことが娯楽として定着していたのです。

 

多くの家には、今では見かけることも少なくなった「応接間」と呼ばれる客人を招く部屋があり、そこにはご自慢のレコードプレーヤーを備えたステレオ装置やピアノが置かれて、センスの良い知的な趣味とちょっとした上流気分を楽しんだものでした。

 

時代は変わり、音楽の聴き方は家の中からむしろ外で聞くことが多くなり、音楽デジタルプレーヤー等を通してヘッドフォン/ イヤフォンで聞くケースが主流となっています。

一般家電製品と同じように電器店で販売されていたレコードプレーヤーやオーディオ装置はほとんど店頭から姿を消しましたが、しかし趣味としてのレコードプレーヤーを含むハイファイオーディオ機器は、さらに本格的に自宅で音楽を楽しむためにその後も様々なブランドやエンジニア達がそれぞれのポリシーで魅力的な作品を世に送り出しています。

 

例えば楽器の一部として捉えられているギターアンプは、演奏に対するレスポンスに優れ、音に厚み、温かさ、そして色気を与える「真空管」を使用したチューブアンプが未だに主流ですが、オーディオアンプにおいても同様に音楽的な表現力が豊かで、音に温かみやしなやかさ、そして潤いを与える真空管アンプが大いに活躍しています。

 

また、スピーカーは音を響かせるという点で、まさに楽器そのものと言えるでしょう。モデルによっては楽器が放つ自然な響きを再現させるために、ヴァイオリンやアコースティックギター等の本物の楽器と同じ工法を使ってキャビネットが作られるモデルもあります。

 

そうです。このようなオーディオ装置は家電ではなく、「楽器」そのものなのです。

特にアナログ・レコードを演奏するレコード・プレーヤーは、レコード盤に刻まれた溝の僅かな凸凹をレコード針が拾い、その振動がアームの先端に取付けられたカートリッジ内のマグネットとコイルを介して微弱な電流を発生させ、その信号がアンプに送られ音を発音します。

この原理はエレクトリック・ギターの弦振動が、同じくマグネットとコイルを持つピックアップ(マイク)を通して発電され、アンプで増幅して音を発音する構造とほとんど同じです。

 

ギターがボディーを共鳴させて音を長く持続させる構造に対して、レコードプレーヤーはレコード盤の音溝に刻まれた音楽信号以外は演奏を邪魔する音になるため、極力ボディーやパーツ類が共鳴しない構造体を理想とします。

いずれにせよ、このような物理特性を応用して音の響きを得る構造は、まさに楽器そのものです。

 

家で生楽器によるライブミュージックを楽しむ贅沢。アナログ・レコードからCD へとメディアが移行して行ったのは80年代後半のこと。

しかしそれから今現在に至るまでもアナログ再生芸術の探求は、休むこと無く続けられて来ました。

その当時のアナログ・レコードを現代の洗練されたアナログプレーヤーやオーディオ装置で演奏すると、その濃密で鮮烈なサウンドに思わず「えっ!」という驚嘆の声を漏らすことでしょう。

 

一度ヘッドフォンを外して、この楽器達が奏でる音楽を音圧を感じながら聴いてみて下さい。まるでライブミュージックのようなサウンドステージがあなたの目の前に現れることでしょう。

そしてミュージシャンたちが一心不乱に演奏に没頭する姿が見えてくることでしょう。

今まで感じることのなかったあらたな音楽からの衝撃を体感してください。

きっとあなたのフェイバリットなミュージシャンのライブを聴くために、早く家に帰りたくなるはずです。