以前にもレポートしましたが、「アデル」、「ポール・マッカートニー」のプロデューサーとして、また2014年にはエボラ出血熱の支援目的で再結成された「バンド・エイド30」のプロデュースも手掛け、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで世界的に活躍する「ポール・エプワース」の超本格的なレコーディング・スタジオ「The Church Studio」がいよいよ始動しているようです。
昨年には既にU2のレコーディング(最後の写真がU2セッション時のカット)が完了し、これから続々と様々なアーティストの作品がリリースされてくることと思われます。
特に圧巻は写真のメインスタジオ1。
中央に美しいビンテージ・ラディックのヴィスタライト・ドラムセットが置かれ、その正面にはピンク・フロイドのアルバム「Wish You Were Here」で使用されたNeveの72チャンネルコンソールが鎮座します。
それ以外にも数々のアナログシンセサイザーやマニア垂涎のマイクやイコライザー等々、ビンテージ機材のレアアイテムがセットアップされています。
もちろん先日レポートしたパラヴィチーニ・カスタマイズの「Studer J37」テープマシンや「EAR 912」を含むプロスタジオ機材も多数導入されています。
注目すべき点はNeveコンソールの置かれているコントロールルームがオープンスペースになっているところ。
これは「No - Bars」レコーディングの体験ができるようにとエプワースがとりわけこだわったデザインのようです。
「Bar」とはバーのカウンターのような障壁を指すと同時に、楽譜に出てくる「小節」を表す言葉でもあり、「No - Bars」とは「壁が無い」、「小節が無い」、つまりライブ・セッション/レコーディングする演奏者、エンジニア全員がお互いに刺激し合い、そのエネルギーを最高潮に高めるためのキーワードという意味のようです。
(小節ごとにコマ切れで録音して曲を繋ぎあわせて作って行く昨今のトレンドに対して、プロとしてのアンチテーゼの意味もあるのでしょう。)
以前にも日本のレコーディングエンジニアの第一人者である赤川新一さんが「皆で、よ~いどんで録った音のほうが全然良くなる」と語られていましたが、人と人とのインターフェイスや楽器や部屋の共鳴等々、様々な要素が「いい音」の根源としてあるのでしょう。
いずれにしても「素晴らしい音」を奏でる、本物の音楽がリリースされることを期待しましょう。(K)